暴力の進化と戦争の起源


【報告者】徳増雄大 /【司会者】伊藤隆太

コンシリエンス学会研究会(2021年 3月31日20時~21時半)

【テーマ】暴力の進化と戦争の起源

【報告者】徳増雄大 /【司会者】伊藤隆太

【申込】https://peatix.com/event/1845869 (開催済)

【要旨】

人間の本性が善か悪かという議論は古来からありました。これはやはり「人間には両方の側面がある」とみなすのが恐らくは実情で、社会を見渡してみても記録上戦争が起こったことのないボリビアのTsimaneから、さまざまな形で戦争を行ってきた多くの国が存在します。個人レベルでも、普段は他者に協力的な人間が時には恐ろしい暴力を振るうことがあります。それでは、人間のこの二面性をどのように理解すればよいのでしょうか。

この疑問に答える本のひとつが、人類学者/霊長類学者リチャード・ランガムが2019年に出版し昨年日本でも邦訳された「善と悪のパラドックス」です。この本では動物一般における攻撃性と人間の攻撃性を比較し、その攻撃性が人間社会で果たしてきた善と悪、両面での機能について議論すると共に、ヒトはこの攻撃性によりいわばヒト自身を「家畜化」したのではないかという自己家畜化説を紹介しています。またこのプロセスでランガムは強い性差の存在を想定しています。

このランガムの主張を議論するためには、進化人類学や進化心理学での議論を多くの学問分野と共に比較・検討するプロセスが必要です。そこで本研究会では、ランガム「善と悪のパラドックス」を中心に、ヒトの攻撃性、戦争の起源、平等性、性差を多角的に議論していきます。本研究会では人類史における戦争や攻撃性、平等性、性差を中心に扱います。報告者で気鋭の進化学者の徳増先生は、基本的に進化学をベースとした議論を行いますが、さまざまな分野のかたの参加と議論を通じて上記のトピックについてより深い理解を得ることを目的としています。また時間が許せば、狩猟採集社会と現在の日本のような工業化された社会の性質の共通点や差異、現状の進化学における社会問題との関連性についても取りあげる予定です。

ご参加された方は、進化心理学の世界で活躍されている徳増先生に直接質問をして、お話を伺うこともできます。今、進化心理学という学問が圧倒的に注目を集めているなかで、これほど貴重な機会はないと思われますので、皆さまふるってご参加ください。

【関連書物】

本研究会では2020年に邦訳されたランガム「善と悪のパラドックス」(http://amzn.to/3rlD8N1)を中心に扱うが、未読でも大枠を理解できるように最初に徳増が内容の簡単な説明を行います。また参加に関して読了は必須ではないが、最近の雑誌としては岩波書店「科学」の2021年2月号が自己家畜化説を多く取り上げているのでそちらも関連書物のひとつとして名前を挙げておきます(http://amzn.to/3qkpmZI)。

【報告者略歴】

徳増雄大(とくます・ゆうだい)

京都大学総合人間学部卒業、同大学医学研究科で修士号を取得、現在、東京大学理学系研究科生物科学専攻博士課程に在籍。特にヒトに特異的な性差に関する進化心理学的研究に従事している。コンシリエンス学会編集委員、共創言語進化学 若手の会世話人。